「CG動画でわかる 射出成形金型 構造編」

はじめに

自動車部品設計や金型設計を業とする会社を経営する傍ら、自社製品を世に出したいとの念願を持ち続けているなか、あるとき、金型設計担当の社員と語らううちに、一瞬のひらめきが、幸運にも、アンダーカット成形ユニット”すっぽん”の特許考案を私にもたらしました。

その後、”すっぽん”の新機種開発を展開すべく、素人の私(もともと、建築構造設計が専門です)が、”すっぽん”が組み込まれる先の射出成形金型の知識を得るため、多くの書籍にあたり、勉強に取り組みましたが、金型の構造と動作の理解に長い間、随分と難渋しました。

その難渋の原因は、わたしの理解力の低さにあることもさることながら、金型の「構造」と「動作」という金型を成り立たせている要素が、徹底的に、かつ両方の要素が関連付けられながら機動的に解説されている書籍に出会わなかったことに在るのではとの思いに至りました。

射出成形金型の体系的な知識の習得には、金型の「構造」と「動作」がどのように関連しながら成形動作を司っているのかを知ることが最も近道であると、難渋して体系的な金型の知識を習得した後に、それまでを振り返って気づきました。

その気づきから、私のような素人でも、金型の「構造」と「動作」が容易に理解できる本を、次のような執筆意図を反映させて世に出そうと決意しました。


まず、金型の「構造」を徹底的に理解できるように、金型の構成部品の全てをネジ1本にまで及ぶ完全な分解図に網羅しました。

そして、込み入って組み付けられている部品の組み付け状態(難解ですが、その組み付け構造こそが、先人の英知が込められた機構であり、金型の成形動作を巧みに司っています)を丁寧に解説しました。

さらに、”先人の英知が込められた機構”の巧みな成形動作を、本書に付属するCD のCG 動画でも確認できるようにしました。

このCG動画を参照される読者は、あたかも金型の組立現場に居るかのように、各構成部品が、順次、金型として組み上っていく手順と組み付け状態が手に取るように解り、細部に及んだ金型全体にわたって「構造」をくまなく理解されることでしょう。


次に、金型の「構造」をその「動作」と関連付けて機動的に解説するため、CG 動画で、金型構成部品(「構造」)がどのように「動作」するのか、その「動作」を司る「構造」はどのようになっているのか、また、その「動作」は、金型全体の成形運動にどのような効果をもたらすのか、といった金型全体の成形運動を成り立たせる「構造」と「動作」を関連付けて機動的に、かつ徹底的に解説しました。

このCG 動画を参照される読者は、金型の各構成部品が、互いに同期性を保ちながら連携し、自動的にピンゲートを切断する3プレート金型の章に到っては、「構造」と「動作」を関連付けて機動的に、かつ徹底的に解説する執筆意図が如実に表れていることに気づかれ、CG 動画を駆使した解説の実効性に驚かれることでしょう。


さて、このようにして、金型の「構造」と「動作」を会得された読者は、本書の後半を占める「射出成形機」、「スプルー・ランナー・ゲート」、「成形品の突き出し」、「エアベント」、「金型の温度コントロール」の各解説にあたる過程で、会得された金型の「構造」と「動作」の知識が、これらの習得必須科目の理解に如何に役立つかを実感されることでしょう。

また、これら後半の習得必須全科目においても、各科目を金型の「構造」と「動作」に関連付けて機動的に、かつ徹底的に解説する執筆意図が、前半と同様に貫かれています。


本書を執筆する過程で最も注力したことは、私が金型を勉強したときに「構造」と「動作」の関連が解らないが故に理解に難渋した事項を、徹底的に解説したことです。その解説は、機動的なCG 動画と相俟って、読者により容易に理解(納得)して頂けるものと確信しています。


2010 年3 月 反本 正典